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学校問題

【悪質いじめ隠蔽】「集団下校は殴り放題」── 埼玉・上尾市立中で女子生徒に殴打・ストーカー・わいせつメッセージ PTSD発症 学校長が「事実と異なる」報告書を市教委へ提出 再調査委員会が「偽造文書」批判を裏付け

「集団下校は殴り放題だ」── 中学校の同級生にこう言い放たれ、腹を殴られ、下校途中をつけ回され、携帯電話にわいせつなメッセージを繰り返し送り付けられた女子生徒は、恐怖心で学校に通えなくなり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。埼玉県上尾市の市立中学校で2021〜2022年に起きたいじめ重大事態をめぐり、上尾市いじめ問題再調査委員会がまとめた報告書を市が公表。「学校が市教委に提出した『いじめ重大事態調査報告書』に記載されていた調査組織が実際には存在せず、学校長が事実と異なる記載をした」と問題視した。被害女子生徒側はかねてから学校作成の報告書を「偽造文書だ」と批判してきており、再調査委員会の答申はこの主張を事実上裏付ける形となった。市は2025年12月23日に再発防止策を公表したが、教育現場の隠蔽体質・公文書類への虚偽記載という法治国家の根幹を揺るがす疑惑は、なお解明途上である。

被害女子生徒は PTSD を発症し、卒業後に同級生から謝罪を受けた。一方、学校長は重大事態調査報告書に「存在しない調査組織」を記載していた疑い。教育現場の文書虚偽記載は、いじめ問題そのものより根が深い。法治国家として、何があったのかを徹底解明せねばならない。

年表

日付出来事
2021年2学期以降中学2年の女子生徒が、同級男子生徒から腹を殴られるなどの暴力被害を受け始める。下校途中をつけられたり、携帯電話にわいせつなメッセージを送り付けられたりする被害も発生
2022年5月中3に進級した女子生徒が下校時、男子生徒が同行していた他生徒の手を取って女子生徒を殴らせ「集団下校は殴り放題だ」と言い放つ事件発生。同月、中学校がいじめを認知
2022年7月女子生徒が恐怖心から登校できなくなり、上尾市教育委員会がいじめ防止対策推進法第28条に基づく「いじめ重大事態」として対応開始
その後女子生徒は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断される
2023年7月27日上尾市いじめ問題調査委員会、調査報告書を答申
2023年8月23日夜上尾市教育委員会、調査報告書をホームページで公表
2023年8月25日(埼玉新聞報道)女子生徒が親に「消えたい」と漏らしていたこと、加害生徒側が卒業後に謝罪したことなどが報じられる
2023年12月上尾市議会、調査委員会の調査方法・組織・内容の不備を理由に「再調査」を求める請願を採択
2024年2月22日上尾市長、上尾市いじめ問題再調査委員会へ正式に諮問
2025年10月27日再調査委員会、市長へ調査報告書を答申。学校長による「事実と異なる」記載を問題視
2025年12月22日教育長から市長へ、再調査委員会の7項目の提言を踏まえた再発防止策を手交
2025年12月23日上尾市、再調査委員会調査結果を踏まえた再発防止策の実施を公表
2026年5月朝日新聞デジタル等大手紙が続報。再調査委員会報告書の詳細と被害女子生徒側の主張を伝える

「集団下校は殴り放題だ」── 中学校で起きていた執拗ないじめの全容

毎日新聞および上尾市公式発表によれば、いじめ被害を受けたのは埼玉県上尾市の市立中学校に通っていた女子生徒である。中学2年だった2021年の2学期以降、同級男子生徒から執拗ないじめを受けていた。

女子生徒が受けた被害は、次のように多岐にわたる。

  • 身体的暴力: 男子生徒から腹を殴られるなどの暴行
  • ストーカー行為: 下校途中に後をつけられる
  • わいせつメッセージ送信: 携帯電話にわいせつな内容のメッセージを繰り返し送り付けられる

これらは独立した「いたずら」ではなく、身体的・性的・心理的に多面的な攻撃を一人の女子生徒に集中させる、典型的な性的いじめおよびストーキング行為である。少年事案であっても、これらの行為は刑法の傷害罪(第204条)ストーカー行為等の規制に関する法律性的姿態等撮影処罰法および関連条例に該当しうる重大な人権侵害である。

そして、女子生徒が中学3年に進級した2022年5月、いじめは新たな段階に達した。下校時に4人の生徒が一緒になった際、男子生徒はそのうちの1人の手を取って、女子生徒を殴らせたとされる。さらに次のように言い放ったという。

集団下校は殴り放題だ。

この発言は、加害男子生徒の人権感覚の崩壊と暴力の組織化を象徴する。被害者を「殴り放題の対象」と公言する行為は、もはや「子どもの喧嘩」ではなく、集団暴力への教唆に近い。同行していた他生徒も、自らの手で殴打に加担した形になる。

「消えたい」── 親に漏らした女子生徒の絶望と PTSD 発症

埼玉新聞の2023年8月25日報道によれば、いじめを受けた女子生徒は、家庭でも深刻な心理的影響を受けていた。父母に対し、次のように漏らしていたという。

消えたい。

13〜15歳の中学生という、最も健やかな成長を保障されるべき時期に、自らの存在を消したいと願わざるを得ない苦しみ。これは、いじめが単なる「学校内のトラブル」ではなく、被害者の生命の危機にまで及ぶ深刻な人権侵害であることを冷厳に示している。

女子生徒は2022年7月以降、恐怖心から登校できなくなった。その後、医療機関で心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。PTSD は、戦争・暴行・性犯罪・大事故などの極限的外傷体験で発症する精神疾患であり、フラッシュバック・過覚醒・回避・気分の落ち込みなどが長期的に持続する。中学生がいじめを直接的原因として PTSD を発症した事実は、本件いじめが「臨床的にも犯罪被害級の外傷」だったことを医学的に証明している。

埼玉新聞報道では、加害生徒側は卒業後に女子生徒側へ謝罪したことも明らかにされている。学校側は「いじめた同級生が謝罪、解決した」と甘く捉えたが、被害女子生徒の PTSD は卒業後も続いた。

学校長が記載した「事実と異なる」報告書 ── 再調査委員会が「存在しない調査組織」を指摘

本件で本来のいじめ問題以上に深刻なのが、その後の学校側・教育委員会の対応である。

上尾市は2022年7月にいじめ防止対策推進法第28条第1項に基づく「いじめ重大事態」として対応を開始した。同法は、いじめにより被害者の生命・心身に重大な被害が生じた疑い、または不登校になった疑いがある場合を「重大事態」と定義し、地方公共団体の長への報告と調査組織の設置・調査実施を義務付けている。

市は2023年に弁護士・医師・大学教授らから構成される「上尾市いじめ問題調査委員会」を設置。2023年7月27日に同委員会が答申した調査報告書を、市教育委員会が同年8月23日夜に公表した。

ところが、被害女子生徒側は、学校長が市教委に提出した「いじめ重大事態調査報告書」を「偽造文書だ」と強く批判してきた。市議会も2023年12月、調査委員会の調査方法・組織・内容に複数の不備があったとして、再調査を求める請願を採択した。

これを受け、上尾市長は2024年2月22日付で上尾市いじめ問題再調査委員会に再調査を諮問した。再調査委員会は、いじめ防止対策推進法第30条第2項に基づき、地方公共団体の長部局に設置される独立調査組織である。

そして2025年10月27日、再調査委員会が答申した報告書には、次のような衝撃的な指摘が含まれていた。

問題発覚時に学校が市教委に提出した「いじめ重大事態調査報告書」に記載されていた調査組織が、実際には存在しなかった。学校長が事実と異なる記載をした経緯がある。

つまり、学校長は、実在しない「いじめ調査組織」を報告書上に記載して市教委に提出していたのである。これは事実上、被害女子生徒側がかねてから主張してきた「偽造文書だ」という批判を、第三者機関の再調査委員会が裏付けた形である。

学校長の「事実と異なる記載」── 虚偽公文書作成罪に該当しうる重大事案

学校長が市教委へ提出する「いじめ重大事態調査報告書」は、いじめ防止対策推進法に基づき作成義務が課された公的書類である。市町村立学校の校長は地方公務員(特別職)であり、職務上作成する文書は公文書に該当する可能性が高い。

仮に校長が、実在しない調査組織を意図的に記載したのであれば、刑法第156条「虚偽公文書作成等罪」に該当する可能性が浮上する。同条は次のとおり定めている。

公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、第154条又は前条の例による。 (刑法第156条)

この罪の法定刑は、印章・署名がある公文書なら1年以上10年以下の懲役、ないものなら3年以下の懲役または20万円以下の罰金である。

もちろん、再調査委員会の段階では「事実と異なる記載があった」との指摘にとどまり、校長個人を刑事告発する段階には至っていない。しかし、被害女子生徒側が一貫して「偽造文書」と批判し、再調査委員会も「事実と異なる」と認定した以上、校長個人の刑事責任の有無を含めた追加捜査・告発の余地は十分にある。

加えて、市教育委員会の指導監督責任も問われる。市教委は学校長から提出された報告書の内容を精査せず、実在しない調査組織の記載を見抜けなかったか、あるいは見抜きながら看過した可能性がある。地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づく教育委員会の責任は重い。

「いじめ防止対策推進法」の機能不全 ── 法律はあるが運用が機能していない

2013年に成立したいじめ防止対策推進法は、日本のいじめ対策の根幹となる法律である。同法は次の3段階の対応を制度化した。

  1. 第22条: 学校内に「いじめ防止対策のための組織」を常設し、いじめの未然防止・早期発見・対処にあたる
  2. 第28条: 「重大事態」が発生または疑われる場合、学校または学校設置者(教育委員会)が調査組織を設置して調査を実施する
  3. 第30条: 重大事態の調査結果が不十分な場合、地方公共団体の長部局が再調査委員会を設置できる

本件は、この3段階すべてが機能不全に陥った稀有な事例である。

第1段階の機能不全: 2021年2学期以降の暴力・ストーカー・わいせつメッセージという複合的いじめを、学校が早期発見・対処できなかった。中学2年から中学3年5月まで、約1年半にわたり被害が継続した。

第2段階の機能不全: 2022年7月に「重大事態」と認定されながら、学校長が市教委に提出した報告書に「実在しない調査組織」を記載していた。これは調査そのものが適正に行われたかすら疑わしいことを意味する。

第3段階の動員: 被害女子生徒側と市議会の働きかけで、ようやく再調査委員会が動き、2025年10月に「事実と異なる記載」を指摘した。本来、第2段階で適正な調査が行われていれば、第3段階の動員は不要だった

この機能不全は、上尾市単独の問題ではない。全国の市町村教育委員会・学校で、同様の「形式的調査・隠蔽傾向」が横行している可能性がある。文部科学省は2024年8月に「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を改訂したが、ガイドラインがあっても、現場の運用が機能不全であれば被害者は救われない。

「いじめ重大事態は6件」── 上尾市内の深刻な現状

地元の独立系市民監視団体「上尾オンブズマンの館」のレポートによれば、上尾市内の小・中学校では現時点で「いじめ重大事態」が6件抱えられているとされる。本件はそのうちの1件である。

人口約22万人の市で重大事態6件という数字は、決して少なくない。被害者がそれぞれ PTSD・不登校・退学・転校などの深刻な後遺症を抱え、家族と共に長期にわたる訴訟・行政交渉に追い込まれている可能性が高い。

上尾市は2025年12月23日、再調査委員会の7項目の提言を踏まえた再発防止策を公表した。さらに2026年5月には「令和8年度第1回上尾市いじめ問題対策連絡協議会」の開催も発表されている。「再発防止」が単なる文書上の建前で終わらず、現場の運用に実効性をもって反映されるかが、今後の最大の焦点である。

加害男子生徒に対する処分も問われる。少年法の枠組みの中で、本件の悪質性に応じた家庭裁判所による少年審判が必要である。「子どもの過ち」と片付けることは、被害女子生徒の人権と尊厳を二重に侮辱する行為である。また、あおいみゆでは加害者の情報が分かり次第晒し上げる

そして、被害女子生徒の現在の状況に、社会全体が思いを致すべきである。PTSD は数年〜数十年単位の治療を要する重い精神疾患である。彼女が今後、人生のあらゆる場面で本件の影響と向き合い続けねばならない事実は、加害男子生徒・学校・市教委の責任の重さを物語る。

自由民主主義社会において、子どもが安全に学ぶ権利は最も根本的な公益である。司法には公文書虚偽記載の刑事責任追及を、行政には教育現場の隠蔽体質の根絶を、社会には被害女子生徒への長期的支援を、強く求める。「集団下校は殴り放題だ」と公言する加害者を許容する社会には、子どもの未来はない。

取材・参照ソース一覧

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