2025年9月12日と13日の2日間、福岡県筑紫野市の県道で16〜17歳の高校生ら男女計8人が原付バイクで並進・対向車線はみ出し・信号無視の集団暴走をしていた共同危険行為事件で、福岡県警筑紫野署は2026年3月5日までに、男子高校生2人を道路交通法違反容疑で逮捕し、残る6人を書類送検した。
事件の異常さを物語るのは、その動機。容疑者らは「パトカーに追われて楽しみたかった」「警察をおびき寄せるために110番通報した」と供述したという。自分たちで110番に通報し、駆けつけたパトカーから逃げる「カーチェイスごっこ」を楽しもうとしていた、戦後日本の暴走族犯罪史でも特に異常な事案だ。
県警は12日の追跡で容疑者の特定には至らなかったが、その後の防犯カメラ映像解析と粘り強い捜査で半年後の2026年3月、ついに全8人を立件した。本記事は、共同危険行為と110番悪用という二重の悪質性、警察リソースの著しい無駄遣い、そして16〜17歳の高校生がここまでの「警察舐め」をしてしまう現代の少年問題について、現時点で判明している事実を整理する。
2025年9月12日・13日に福岡県筑紫野市の県道で16〜17歳高校生男女8人が共同危険行為。容疑者ら自身が110番通報してパトカーを呼び出し、原付バイク6台で並進・信号無視。一部は無免許。防犯カメラ解析で半年後特定、2026年3月5日に男子高校生2人逮捕、6人書類送検。「警察に追われて楽しみたかった」と供述。
事件の完全年表
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025-09-12 | 福岡県筑紫野市の県道で、容疑者らの一部が110番通報。原付バイク3台に高校生5人が並進、対向車線はみ出し・信号無視の共同危険行為。筑紫野署のパトカーが追跡したが容疑者特定には至らず |
| 2025-09-13 | 翌日も同様に、原付バイク6台に高校生7人が並進、共同危険行為を繰り返す |
| 2025年9月以降 | 筑紫野署が防犯カメラ映像を解析、容疑者特定を進める |
| 2026-03-05 | 福岡県警筑紫野署が男子高校生2人を道路交通法違反(共同危険行為)容疑で逮捕。残る6人を書類送検。一部は無免許運転容疑でも立件 |
| 2026-05-20 | 毎日新聞が事件の全容と容疑者らの「警察をおびき寄せるために110番通報した」「パトカーに追われて楽しみたかった」との供述内容を報道 |
事件の核心 ── 9月12日と13日、原付6台・8人による2日連続の共同危険行為
事件が起きたのは2025年9月12日と13日の2日間、福岡県筑紫野市の県道。容疑をかけられているのは、福岡県内に住む当時16〜17歳の高校生ら男女計8人。全員が原付バイクに乗り、車道を集団で並進し、対向車線にはみ出し、信号無視を繰り返した。
1日目の9月12日は、容疑者のうち5人が原付バイク3台で集団暴走。2日目の9月13日には、容疑者のうち7人が原付バイク6台で同じく集団暴走。両日通して、原付という比較的小型の車両ながら、対向車線への侵入と信号無視という、ほかの一般車両と歩行者に直接の危険を及ぼす運転を繰り返していた。
道路交通法第68条は「共同危険行為等の禁止」を定めている。2台以上の車両を連ね・並進させた上で、道路における交通の危険を生じさせるか、他者に著しく迷惑を及ぼすことになる行為を禁止する条文だ。違反者には2年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。本件は典型的な共同危険行為で、しかも2日連続という反復性も含めて極めて悪質だ。
容疑者の一部は無免許運転容疑でも立件された。福岡県警筑紫野署は、共同危険行為に加えて、原付の運転資格を持たずに公道を走った点も道路交通法違反として処分対象に含めた。
異常な動機 ── 「警察をおびき寄せるため自分たちで110番」
本件で最も異常なのが、容疑者らの供述から判明した犯行動機だ。毎日新聞の2026年5月20日報道によると、容疑者らは取り調べに対して次のように説明したという。
- 「パトカーに追われて楽しみたかった」
- 「警察をおびき寄せるために110番通報した」
110番は、緊急時に市民が警察の救助を求めるための日本社会の最終ライフラインだ。事件・事故・急病・行方不明 ── どれを取っても、人命や財産が危険にさらされているからこそ、警察官と通信指令室の現場対応が即座に駆動される。その制度を、16〜17歳の高校生集団が「パトカーを呼んで自分たちが追われる遊び」のために悪用したというのが、本件の本質だ。
筑紫野署の通信指令室は、最初の110番を「事案」として受理し、現場に向けてパトカーを出動させた。受理から出動までの間、おそらく数十秒から数分の時間が、本来であれば本物の緊急事案に対応するための資源として確保されていたはずだ。それを、原付暴走の「遊び相手」に呼び出されて空費させられた警察官と通信指令の労力を考えると、本当に呆れる。
同じ時間帯に、福岡県内の別の場所で、本当に110番を必要としていた市民がいなかったか。心臓発作で倒れて救急要請の連動を待っていた高齢者、強盗に襲われていた事件の被害者、暴行されていた女性 ── 110番の通信回線とパトカーの稼働は有限資源だ。それが「カーチェイスごっこ」の餌に使われていたとすれば、その瞬間に救助を待っていた誰かが、結果として救助を遅らされた可能性すら否定できない。
福岡県警筑紫野署の粘り強い捜査 ── 12日の追跡断念から半年後の全員特定
9月12日の最初の110番で、筑紫野署のパトカーは現場に急行した。だが、容疑者らは原付バイクという機動性の高い車両を使い、住宅街の細い道に入り込むなどして警察の追跡を逃れた。当日中の容疑者特定には至らなかったとされる。
翌13日にも同様の集団暴走が繰り返された段階で、筑紫野署は単発の犯行ではないと判断したと見られる。その後、9月から翌2026年3月までの約半年間、県道沿いと周辺住宅街の防犯カメラ映像を地道に収集・解析し続けた。原付のナンバープレート、運転者の体格や服装、走行ルートの特徴 ── これらを丁寧に積み上げて、8人全員の身元を特定した。
そして2026年3月5日、筑紫野署は男子高校生2人を道路交通法違反(共同危険行為)容疑で逮捕。残る6人については書類送検した。一部の容疑者には無免許運転容疑も上乗せされた。
逮捕に約半年を要したのは事実だが、これは「警察が後手に回った」のではなく、「現行犯逮捕を逃した相手を、防犯カメラと地道な聞き込みで確実に追い詰めた」と評価すべきだと思う。集団暴走の現行犯逮捕は、原付という機動性と地理に詳しい地元の少年集団相手では本当に難しい。それを後日の検挙でしっかり立件したのは、地方警察の本当の力を見せた仕事だ。
共同危険行為と110番悪用の二重の悪質性 ── どちらも刑事責任を問われる
本件で問われている主な罪は道路交通法違反(共同危険行為等)。法定刑は2年以下の懲役または50万円以下の罰金。容疑者には行政処分として運転免許の取消(取り消し処分歴1年)と、25点の違反点数加点も避けられない。
さらに、110番通報の悪用については、それ自体を直接罰する条文は道路交通法にはない。だが、虚偽の事案で警察を出動させた場合、軽犯罪法第1条第31号「悪戯による警察への偽通報」や、刑法第233条「業務妨害罪」に問われる可能性がある。実際に駆けつけた警察官の追跡が現場で危険な状況に発展していた場合は、刑法第95条「公務執行妨害罪」にも触れうる。
本件の容疑者らが、これらの追加罪に問われるかは現時点では明らかではない。だが、「警察をおびき寄せるために110番した」という供述が確定的に取られている以上、検察と裁判所がここをどう評価するかは注目すべきだ。共同危険行為だけでなく、警察制度そのものを愚弄した行為としての刑事責任を、しっかりと問うべき事案だと思う。
16〜17歳全員に少年法逆送の可能性 ── 「特定少年」未満で家裁、ただし悪質性で逆送も
容疑者は16〜17歳の高校生男女8人。2022年4月施行の改正少年法では、18歳・19歳が「特定少年」として原則検察官逆送の対象になったが、16歳・17歳はまだ通常の少年法対象で、家庭裁判所の審判が原則となる。
家庭裁判所は審判の結果、保護観察・少年院送致・検察官送致(逆送)などを判断する。共同危険行為は「死傷を伴わない交通違反」の範疇に入るので、過去の判例では家裁で保護観察または少年院送致が多い。だが、本件のような「110番を悪用した警察リソースの濫費」が情状で考慮されれば、より重い処分や、悪質性の高い少年への刑事処分相当の逆送もありうる。
個人的に思うのは、16〜17歳でここまで警察を舐めた行動に出る少年に対しては、家裁の判断にも「やはり甘くしすぎではないか」という疑問が湧くということ。バイクの取り消し処分や少年院送致だけで、本件の少年たちが本当に反省するのか。同じ年代の友人や後輩に対して「またやろう」と誘わない保証があるのか。家庭裁判所と保護観察所には、相当踏み込んだ処遇判断が求められる。
個人的に思うこと ── 警察制度を「カーチェイスのおもちゃ」にした少年たちと、福岡県警の地道な勝利
正直、この事件の供述を読んだ時、まず呆れた。次に、ちゃんと立件した福岡県警筑紫野署を素直に立派だと思った。
「パトカーに追われて楽しみたかった」 ── 110番が、人の命を救うための制度だという基本がここまで欠落した16〜17歳の少年集団が、現代日本で集団化している現実は、本当に深刻だと思う。彼らが見てきた創作物の影響なのか、SNSで広がる「警察ごっこ」動画の影響なのか、それとも単純に「親も学校も大人も舐めて育った」結果なのか。原因を一つに絞るのは難しいが、結果として警察制度そのものが「遊び相手」として消費されようとしている現実は、誰の責任でもなく社会全体の責任だ。
福岡県警筑紫野署の対応は、地方警察の地味だが本当に大切な仕事を体現していた。9月の現行犯逮捕を逃した時点で、署内に「あれは諦めた事案」として処理してしまうこともできたはずだ。だが、署はそうしなかった。防犯カメラ映像を半年間かけて解析し、8人全員を特定し、立件した。これは「警察を舐めた少年集団に対する地方警察の意地」とでも言うべき仕事で、警察組織の信頼を支えている。福岡県警筑紫野署のこの仕事は、率直に立派だと評価したい。
そして、家裁と検察にお願いしたいのは、本件の処分を「単なる交通違反」として軽く処理しないでほしいということ。「110番を悪用して警察をおびき寄せた」という事実は、共同危険行為の量刑事情として、ちゃんと重みを乗せて判断してほしい。子どもへの教育的処遇は確かに大事だが、社会全体への警告メッセージという観点でも、本件は曖昧な結末で終わらせてはいけないと思う。
