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2024年4月19日未明、北海道旭川市神居古潭。神居大橋から17歳の女子高校生が突き落とされ、石狩川の流れに飲まれて命を奪われた。逮捕されたのは内田梨瑚被告(23・事件当時21)、共犯の小西優花被告(21・当時19)、そして16歳少年と16歳少女の4人。
共犯の小西優花は2025年3月7日、旭川地裁で懲役23年の有罪判決を受けて確定している。「特定少年」として実名公表された初の北海道事案。一方、主犯格とされる内田梨瑚被告の初公判は、いよいよ4日後の2026年5月25日、旭川地裁で開かれる。
事件の異常性、犯人らの暴力性、そして何より、罪を全面的に認めた小西被告と「私は押していない」「橋に置いてきただけ」と責任転嫁を続ける内田梨瑚被告の対比 ── ここまで見え方の違う2人の被告が出てくる事件は、近年の少年事件・若年凶悪事件の中でも極めて稀だ。本記事では、これまでの公判で判明した事実、小西の自白と内田の否認の決定的な対比、そして内田梨瑚という人物の卑劣さに、踏み込んで書く。
小西優花は罪を認め懲役23年確定。内田梨瑚は「橋に置いてきただけ」「落ちたかどうかは知らない」と否認。被害者の4000円と携帯を置いて立ち去ったことを「殺意なし」の根拠に主張。拘置所で書いた謝罪文を遺族は受け取り拒否。5月25日初公判、6月22日判決。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2024-04-18 夜 | 留萌市内で、内田梨瑚(当時21)・小西優花(当時19)・16歳少年・16歳少女の4人が17歳女子高生をトランクに監禁、旭川方面へ走行 |
| 2024-04-18〜19 深夜 | 道中で被害者に複数回の暴行。コンビニ立ち寄り時、被害者が店員に助けを求める |
| 2024-04-19 未明 | 神居古潭の神居大橋に到着。被害者を全裸にして欄干に座らせ、土下座させ、動画撮影しながら「落ちろ」「死ね」「お前が悪いんだべや」と罵倒 |
| 2024-04-19 未明 | 被害者を石狩川(落差約10m)に転落させる。被害者は溺死。犯人らは現場に被害者の4000円と携帯電話を置いて立ち去る |
| 2024-04-19 直後 | 内田・小西がLINEで「余裕、捜索願も出てない」と平然とやりとり |
| 2024-05-21 | 事件現場から約60km下流の奈井江町石狩川川岸で被害者の遺体発見 |
| 2024年6月以降 | 内田梨瑚・小西優花・16歳少年・16歳少女の計4人を監禁・殺人容疑で逮捕 |
| 2025-02-27 | 小西優花被告の初公判。検察側懲役25年求刑、弁護側懲役15年主張 |
| 2025-03-07 | 旭川地裁(小笠原義泰裁判長)が小西優花被告に懲役23年の実刑判決。「主体的関与」認定 |
| 2025-03-14 | 双方控訴せず、小西の懲役23年が確定。道内初の特定少年実名公表事案 |
| 2025年〜2026年初頭 | 内田梨瑚被告が拘置所で謝罪文を作成 → 被害者家族は受け取り拒否 |
| 2026-03-03 | 旭川地裁、内田梨瑚被告の初公判を5月25日と発表 |
| 2026-05-25 | 内田梨瑚被告の初公判(裁判員裁判)が旭川地裁で開廷予定 |
| 2026-06-08 | 結審予定 |
| 2026-06-22 | 内田梨瑚被告への判決言い渡し予定 |
2024年4月18日夜、留萌市内で被害者A(当時17・女子高校生)は、内田梨瑚を中心とする4人組に強引に車のトランクに押し込まれた。トランクの中は真っ暗で、走行中の振動と排気ガスの匂いに包まれる空間。そこに17歳の少女が押し込まれ、一切の自由を奪われた状態で約2時間半、留萌から旭川まで連れ回された。
道中、車を停めたコンビニで被害者は店員に助けを求めた。震える声で「助けてください」と訴えたが、その瞬間が、被害者の運命を決定的に悪化させた。コンビニで助けを求められた事実は、内田を激怒させた。「自分が逮捕されるかもしれない」と察した内田は、犯行を中断するのではなく、感情の赴くままに犯行をさらに過酷にエスカレートさせる方向へ走った。後の小西被告の判決理由で、小笠原義泰裁判長はこの一連の流れを「身勝手で理不尽な感情の赴くままの犯行」と断罪している。
明けて4月19日未明、車は神居古潭の神居大橋に到着した。神居古潭は旭川市西部のアイヌ文化ゆかりの景勝地で、石狩川にかかる赤い吊橋は観光地としても知られる。だが、深夜から未明にかけてのこの橋は人気もなく、一段と冷え込む。そこで犯人らは被害者を全裸にし、欄干に座らせ、土下座を強要した。すべての過程は動画で撮影された。
裁判で証拠採用された犯行動画は2本。1本目は6.5秒、2本目は12.5秒。北海道テレビ(UHB)・HBC北海道放送・集英社オンラインなどの傍聴記録によれば、被害者は震える声で命乞いをしていたという。それを取り囲む犯人らが嘲笑しながら撮影する場面が、法廷で再生された。傍聴席にいた遺族は、その動画を直視できなかった。
そして、被害者は橋上から約10m下の石狩川に落とされた。死因は溺死。事件発生から約1カ月後の5月21日、現場から約60km下流の奈井江町の石狩川川岸で被害者の遺体が発見された。
共犯の小西優花被告は、自分の裁判で起訴内容をほぼ全面的に認めた。北海道テレビUHBや集英社オンラインの傍聴記録から、彼女の供述を時系列で整理する。
逮捕直後の弁護人との面会では、小西は「(被害者の)二の腕や背中あたりを押し」川に落としたと話していた。事件後に書いた手記には「亡くならせてしまった」という表現も残されていた。「殺してしまった」ではなく「亡くならせてしまった」 ── この受動的な言葉遣いに、自分の責任を直視しきれない少女らしい弱さが見える。だが、彼女は法廷では一貫して罪を認めた。
公判で小西被告は次のように供述している。
判決を下した小笠原義泰裁判長は、小西が「指示されてやった」と弁解した部分を退け、こう認定した。「(小西被告は)一連の犯行に主体的に関与したことは明らかだ」「(内田被告と)実質的に同程度の刑事責任を負う」。検察求刑25年に対し懲役23年。控訴期限の3月14日まで、被告・検察ともに控訴せず、判決は確定した。
小西被告の供述が一貫していたこと、起訴内容を全面的に認めたこと、自身が手を下した事実を否定しなかったこと ── これらは法的には「酌量すべき情状」として考慮されうる要素だ。それでも懲役23年。「実質的に内田と同程度の責任」と裁判長が認定した重さが、この事件の異常性を物語る。
これに対し、主犯格とされる内田梨瑚被告の供述は、徹頭徹尾、責任転嫁と否認に終始してきた。STVニュース北海道・集英社オンライン・NEWSポストセブンなどの報道から、内田被告の発言と弁護方針を整理する。
逮捕直後から内田被告は次のように主張している。
2026年5月25日初公判を控えた公判前整理手続きで、弁護側は次の方針を明らかにした。
弁護側は「4000円と携帯を置いて立ち去った」という事実を、内田被告に「殺意がなかった一つの根拠」として主張する戦略だ。検察側はもちろん、これを退ける論立てを準備している。
正直に書く。この弁護方針は、人として最低の責任転嫁だと思う。
17歳の女子高校生をトランクに監禁して留萌から旭川まで連れ回し、全裸にして土下座させ、動画を撮影しながら「落ちろ」「死ね」と罵倒し、神居大橋の欄干に座らせた。そこまで追い詰めておいて「橋に置いてきただけ」「落ちたかどうかは知らない」 ── こんな弁解が、被害者と遺族の前で通用すると本気で思っているのだろうか。
4000円と携帯を置いて立ち去った? 仮にそれが事実だとしても、「殺意がなかった」根拠になど、まったくならない。落差約10m、深夜の石狩川、流れも急で水温も低い ── そこに全裸で17歳の少女を投じれば、確実に死ぬ。それを認識していなかったと主張するのは、知的に成熟した21歳の女性として常軌を逸している。
2人の被告の供述は、ほぼすべての重要な点で矛盾する。整理しよう。
| 論点 | 小西優花の供述 | 内田梨瑚の供述 |
|---|---|---|
| 被害者を橋から押した行為 | 「リコさんが先に押した。私もそのあと押した」 | 「私は押していない。橋に置いてきただけ」 |
| 殺意 | (殺意は認めず、殺人罪は成立を争わなかった) | 「死ぬなら私のいないところで」と発言、殺意なしと主張 |
| 主犯性 | 「リコさんに指示された」「リコさんに逆らえなかった」 | (主犯性については否定する弁護方針) |
| 監禁・不同意わいせつ | 認める | 認める |
| 関与の主体性 | (裁判長は「主体的関与」と認定) | 「橋に置いてきただけ」「落ちたかどうかは知らない」 |
注目すべきは、小西は「リコさんが先に押した」と供述しているのに、内田は「私は押していない」と全否定している点だ。共犯者である小西の懲役23年判決はすでに確定している。その小西が法廷で証人として、内田の関与を改めて証言する可能性が高い。これは内田の弁護にとって致命的な打撃になりうる。
検察・弁護側はそれぞれ、すでに服役中の小西優花を証人として申請している。さらに、事件当日に現場で行動を共にしていた16歳少年・16歳少女も証人として申請されており、内田被告の側にいた直接の目撃者全員が法廷に呼ばれる構図だ。検察側は警察官も、弁護側は内田被告の母親を情状証人として申請している。
HBCニュース北海道の報道によれば、内田被告は拘置所で被害者遺族に宛てた謝罪文を作成した。だが、被害者家族はその謝罪文の受け取りを拒否した。
そりゃそうだろう、と素直に思う。逮捕直後から「橋に置いてきただけ」「落ちたかどうかは知らない」と責任転嫁を続け、初公判直前になって突然「謝罪文」を書く。これが本心からの謝罪なら、なぜ最初から認めて謝らないのか。なぜ実行行為と殺意を否認したまま、紙切れ一枚で謝るふりをするのか。
これは法廷戦術として、量刑を少しでも軽くするために弁護側が指示した「謝罪のポーズ」だと見るのが妥当だ。「拘置所で謝罪文を書きました、表情も変わってきました」という弁護人のコメントを、被害者遺族が信じるはずがない。「17歳の娘が失った一生」を考えれば、紙切れの謝罪で許せるわけがない。
弁護人は「表情も変わってきた」と取材に語った。表情が変わったから何だというのか。被害者の少女は、もう二度とどんな表情も浮かべることができない。家族は、娘の笑顔を二度と見ることができない。表情の変化を更生の兆しと言いたいなら、まず実行行為と殺意を認めるところから始めなければならない。
集英社オンラインが2024年7月に発表したスクープ記事(2024年スクープ記事年間2位)では、内田梨瑚被告(リコ)の素顔がレポートされている。
21歳で無職、夜の街で連日酒を飲み歩く生活。年下の少女を「舎弟」として従え、暴力団用語で擬制的な上下関係を作り上げる。そして気に入らない相手を見つけると、SNSの無断リポストという、本来何の罪にもならない行為を口実に、トランク監禁・全裸土下座・橋からの転落殺害という量刑のかけ離れた制裁を加える。
NEWSポストセブンが2026年3月に報じた「第2の舎弟」の証言も興味深い。事件後、「第2の舎弟」とされる別の若い女性が、リコさんについて「りこちの事聞かれても一切返さなーい!!」とSNSで発信し、さらに「リコさんの手が包帯でぐるぐるに…」という後日談も流していた。事件発覚後、内田梨瑚被告がなお複数の「舎弟」候補を抱え、グループ内の結束を維持しようとしていた可能性を示唆する。
同じNEWSポストセブンが報じたもう一つの記事では、内田梨瑚被告と「不倫刑事X」が出会ったとされる店で、北海道警の刑事たちが上半身ハダカで乱痴気騒ぎをしていた実態が暴かれた。「ワインをラッパ飲み」「ビールサーバーの栓を開けっぱなしで床をぬらし」「Xだけでなく、別の刑事2人は未成年を口説いていた」という証言まである。事実だとすれば、本件の捜査主体である北海道警の規律にも、深刻な問題があったということになる。
個人的に思うことを、率直に書く。
内田梨瑚被告の振る舞いは、共犯の小西優花被告と比べても、人としてあまりに卑劣だ。小西は罪を認め、自分が橋から押したことを認め、懲役23年の判決を素直に受け入れた。20歳前後の若さで20年以上を獄中で過ごす覚悟を、彼女なりに腹に据えた。それでも遺族の怒りは収まらないし、被害者の少女は戻ってこない。だが、責任を直視した点だけは認めざるをえない。
内田梨瑚はそれをしない。事件当時すでに成人(21歳)だった主犯格が、共犯の19歳の少女より責任から逃げ続けている。これは年齢序列の常識からも、リーダーとして「舎弟」を従えていた者の責任からも、まったく筋が通らない。
「橋に置いてきただけ」 ── この台詞を、被害者の母親の前で言えるのか。「落ちたかどうかは知らない」 ── 17歳の少女が全裸でつり橋の欄干に座らされ、罵倒され、その下には深さ約10mの石狩川が流れている状況で、「知らない」で済む話か。「死ぬなら私のいないところで」 ── これは被害者が死ぬことを内田自身が予見していたという、自白に等しい発言ではないのか。
4000円と携帯電話を置いて立ち去った? それを「殺意がなかった証拠」だと主張する弁護方針は、知性のある法廷戦術というより、被害者と遺族への二次加害だ。被害者は1万円札ではなく命を奪われた。携帯電話より重い、二度と取り戻せないものを失った。それを「金品を持ち去らなかったから殺意がない」と弁解する神経は、本当に常軌を逸している。
5月25日の初公判から、6月22日の判決まで。検察側がどこまでの求刑を打ち出すか、裁判員がどう判断するか。すでに小西優花が懲役23年で「実質的に主犯と同程度の責任」と認定されている以上、主犯格・内田梨瑚被告にはそれを上回る量刑が下らなければ、本件の刑事司法は意味をなさない。遺族が「極刑を望む」と訴えているのは、当然の感情だ。
朝日新聞や毎日新聞の少年法擁護論、若年層犯罪への「更生主義」の議論は、本件をどう説明するつもりだろう。21歳の成人が、19歳の少女を「舎弟」として従え、17歳の少女を殺害し、罪を全否定する。教育更生主義のお題目だけで、この事案を救う処方箋を、リベラル系メディアは出せるのか。
2026年6月22日、内田梨瑚被告への判決が下される。本記事の続報を、その日まで書き続ける。