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子どもを守るべき立場にある教師が、その信頼を踏みにじり、わいせつ行為に及ぶ。そんな許しがたい事件が、この5年間で驚くほど頻発している。
文部科学省の調査によると、2023年度に性犯罪・性暴力等で懲戒処分を受けた教育職員の数は320人。2011年度に統計を取り始めて以来、過去最多を更新した。2022年には「わいせつ教員対策新法」が施行され、社会全体で対策が強化されているにもかかわらず、処分者数は増加の一途を辿っている。
本記事では、5年間の統計データから衝撃的な個別事件の詳細まで、徹底的に掘り下げてまとめた。
まずは数字の全体像を把握しておこう。
| 年度 | 性犯罪・性暴力等による処分者数 | うち児童生徒への性暴力 |
|---|---|---|
| 2020年度 | 200人 | 96人 |
| 2021年度 | 216人 | 不明 |
| 2022年度 | 242人 | 119人 |
| 2023年度 | 320人(過去最多) | 157人 |
| 2024年度 | 281人 | 134人 |
2020年度でも200人台を維持しており、これはすでに8年連続で200人を超えた年度にあたる。2023年度の320人という数字は前年度比で79人増という急増ぶりだった。
2024年度の281人を詳細に見ると、このうち134人が児童生徒への性暴力を理由とするものだ。その134人のうち、132人が懲戒免職という最も重い処分を受けている。ほぼ全員が即日で教壇を追われる計算だ。
被害の内容を種別で見ると(2022年度データ)、多い順に以下の通りとなっている。
「性交」が最多という現実は、単純なハラスメントではなく、深刻な性的暴行が横行していることを示している。
統計上の数字ですら320人を超えているが、専門家はこれが実態のごく一部にすぎないと口を揃える。
筑波大学の原田隆之教授(犯罪心理学)は、盗撮は被害者が気づかないケースが多く、子どもを対象にした性犯罪は子ども自身が「犯罪」と認識できない場合が多いため、事案化しにくいと指摘している。発覚して処分された数が320人なら、水面下で被害を受けた子どもたちはその何倍にも上る可能性がある。
2020年、都立特別支援学校の女性教諭(当時30歳)が、担当していた男子生徒(当時16歳)と乗用車の車内で性的な行為に及んだ。この事件が表面化したのは4年後の2024年10月で、東京地裁で執行猶予付きの有罪判決を受けた。加害者が女性、被害者が男性というケースで、あまり報道されにくいが確かに存在する構造的な問題を浮き彫りにした。
東京都教育委員会は2022年3月、女性教師(32歳)を2年前の当時の勤務先の男子中学生との性行為を理由に懲戒免職とした。同意という言葉では片付けられない教師と生徒の権力関係の問題が問われた事案だ。
2021年10月、兵庫県教育委員会が特別支援学級の女子生徒の下半身や胸を触るなどの行為で男性教諭を懲戒免職処分とした。さらに、その事実を知りながら管理職に報告しなかった40代の女性教諭も減給処分を受けた。「隠蔽」という組織的な問題も明るみに出た。
この年の最大の変化は法制度の面だ。「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(わいせつ教員対策新法)」が4月1日に施行された。この法律により、わいせつ行為で教員免許を失効した場合、免許の再交付が原則として拒否されるようになった。また、免許失効者のデータベース検索期間が過去3年から40年分に大幅拡大された。
しかし皮肉なことに、この法施行後も処分者数は増加の一途をたどっている。
2022年7月、京都府警は岡山市の医師(47歳)を岡山県迷惑防止条例違反容疑で逮捕した。ペン型カメラを使って女子生徒の下着姿などを撮影していたのだ。さらに、大阪や兵庫の学校でも、40人以上の女子生徒を携帯電話やペン型カメラで盗撮した医師(35歳)が児童ポルノ禁止法違反で有罪判決を受けている。
教員だけでなく、定期健康診断で訪れる学校医による犯行も相次いでいた。文部科学省はこの問題を受け、2024年度から健康診断において原則として上半身裸ではなく体操服などで体を覆うよう全国に通知している。
2023年9月、東京都練馬区立中学校の校長(55歳)が、執務室で少女の裸の画像を所持していたとして、児童買春・ポルノ禁止法違反(単純所持)の疑いで逮捕された。
発覚のきっかけは、都教育委員会の窓口に寄せられた相談だった。元の勤務先の少女生徒の裸が写った画像が執務室のパソコンに保存されていたという。「校長」という最高責任者の立場にある人物が、自らの執務室で犯罪行為に及んでいたという衝撃は計り知れない。
この事件は12月19日の初公判で起訴事実を認め、東京地裁で懲役9年という重い判決が下された。
【時系列】
同じ練馬区では、区立中学校の別の教師が生徒の股間を触るなどのわいせつ行為を行い、事実を認めた後に逮捕され、その後自殺するという事態が発生した。さらに被害生徒は同級生などからひぼう中傷にあう二次被害まで受けた。
被害者は区に対して損害賠償請求訴訟を起こし、2024年2月に提訴。その理由として、学校が警察に通報する義務を怠ったことと、ひぼう中傷への対応が不十分だったことを挙げた。練馬区教委は2023年12月に外部有識者による特別対策委員会を設置している。
この事件は、教育界だけでなくスポーツ界にも大きな衝撃を与えた。
東京都葛飾区の私立・修徳中学・高校のサッカー部監督だった吉田拓也容疑者(当時29歳)が2023年12月10日、警視庁に逮捕された。
修徳高校サッカー部は全国高校サッカー選手権に9度出場した名門校で、13人のプロ選手を輩出している。吉田被告は大学時代からアルバイトとしてコーチに関わり、新卒で監督に就任。低迷していたチームを関東大会優勝、全国大会出場に導いた手腕派の指導者だった。
しかし、その裏の顔は凄惨だった。
【時系列】
法廷では、吉田被告は「男同士のノリ」「部員の一皮むかせたい思いがあった」などと支離滅裂な言い訳を繰り返した。しかし被害者4人(A〜D)全員が示談申し出を拒否しており、スマホには同性愛の検索履歴も多数残っていた。検察側は懲役12年を求刑した。
2024年1月、新潟県教育委員会が県立学校の会計年度任用職員の男(37歳)を免職処分にしたことを発表した。この男は勤務先の学校のトイレ内で女子児童に対してわいせつな行為をして動画撮影を行い、さらにそれ以前にも更衣室やトイレで別の女子生徒を盗撮。2023年12月に起訴されていた。
2024年10月、埼玉県教育委員会は衝撃的な事実を公表した。21年前の当時小学校6年生だった男性がホームページを通じて性的被害を申し出て調査したところ、県教育局の課長級の女性職員(52歳)を懲戒免職とした。
女性職員は当時、自宅や教室などで男児の性器に触れキスをするなどの行為に及んでいたことが確認され、男児を自宅に招いて性交まで試みていたとも報道されている。加害者が女性、被害者が男児というケースで、21年もの時間を経て真実が明らかになったことも衝撃的だ。
2024年5月、香川県丸亀市立城南小学校の教諭(25歳)が、小学校教室内に小型カメラを設置して女子児童の下着を盗撮しようとしたとして、建造物侵入と県迷惑防止条例違反の疑いで再逮捕された。
2025年に発覚したこの事件は、これまでの教員によるわいせつ事件とは次元が違う。全員が教員というグループが組織的に女子児童を盗撮し、その画像を共有していたのだ。
事件の発端は別の「鬼畜行為」だった
2025年1月28日、名古屋市熱田区の駅ホームで、15歳の女性のリュックサックに体液をかける事件が発生した。
この犯人として3月10日に器物損壊容疑で逮捕されたのが、名古屋市内の小学校教諭(34歳)だった。さらに捜査が進むと、この男がかつて勤務していた学校の女子児童の楽器に体液を付着させたり、給食に混入させたりするという異常な余罪も発覚した。
そして捜査員がこの男のスマートフォンを解析したところ、秘匿性の高いSNSアプリ「Element」上に存在するグループチャットの存在が浮かび上がった。
「HLT」という名のグループ
グループ名は「HLT」。H=変態、L=ロリコン、T=ティーチャーの頭文字だ。
このグループの開設者は、名古屋市の小学校に17年目として勤務し、2023年には教務主任、2025年4月からは主幹教諭として中心的な立場にいた森山勇二容疑者(42歳)だった。
森山容疑者は2020年頃からSNSに「ロリ川柳」と名付けた投稿を開始し、同じ性的嗜好を持つ教員とつながるようになった。2024年8月頃、「信用できる」と判断した6人の教員をグループに招いた。
【時系列】全メンバーの逮捕まで
グループで共有されていたもの
グループチャットには女子児童の着替えや下着を盗撮した画像・動画が約70点共有されていた。そのほとんどが学校の業務中や行事の際に撮影されたもので、生成AIで加工した「性的ディープフェイク」画像まで含まれていた。
メンバー同士は画像を見て「うらやましい」「いいですね」「見入っちゃいます」などと称賛し合っていたという。
なぜ教員が標的になるのか
専門家は指摘する。教員という職業は、子どもと閉鎖空間で接することができ、親からも信頼されるポジションだ。校外学習や行事などでの撮影も、業務として当然のように行われる。その「職業的な権限」が性犯罪者にとっての「武器」になっていた。
2024年8月から10月にかけて、三重県の私立高校の男性教諭(49歳)が女子生徒に性的行為を繰り返していたことが発覚。授業終了後に指導名目で生徒を寮に呼び出し、犯行に及んでいた。
この教諭は逮捕されるたびに「全く身に覚えがありません」とすべての容疑を否認し続けており、被害者は確認されているだけで5人に上っている。
2025年6月27日、広島市内の小学校に勤務する教諭(38歳)が、10歳未満の女子児童を無人の教室に誘い込み、自身の下半身を露出してわいせつな行為をしようとしたとして逮捕された。教員グループ盗撮事件が連日報道される中での逮捕で、教育現場への不信感が頂点に達する時期の事件となった。
精神科医の福井裕輝医師(NPO法人性犯罪加害者の処遇制度を考える会代表)は、人口の5%程度には先天的な小児性愛傾向があり、教育現場という「子どもに近づける職場」は性加害者にとって格好のターゲットになりやすいと指摘している。
学校という場所には構造的な問題がある。教師は教室という密室で子どもと二人になることができる。保護者の信頼も厚く、「先生が言うことだから」という権威が子どもの抵抗感を削ぐ。子ども自身が被害を性暴力と認識できないまま、長期間にわたって繰り返されるケースも多い。
かつての教員による性犯罪は孤立した個人犯行がほとんどだった。しかし2025年の教員グループ事件が示したように、SNSの普及が同じ嗜好を持つ者同士のつながりを容易にした。
「ロリ川柳」という言葉で同好の士を集め、秘匿性の高いアプリで安全圏を作り、互いに称賛し合いながらエスカレートしていく。こうした集団化・組織化が犯行の悪質性を飛躍的に高めた。
2022年のわいせつ教員対策新法施行、2023年の性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)施行と、法整備は着実に進んでいる。2026年12月には「日本版DBS」(子どもと接する職業への就職前に性犯罪歴を確認する制度)の施行も予定されている。
しかし筑波大学の原田教授が指摘するように、法律が厳格化・厳罰化されても事件数は減少するどころか増加している。法律は「発覚後の対処」には有効だが、「発覚前の予防」には限界がある。
子どもが被害を訴えたとき、大人はどう対応すればよいか。専門家が繰り返し強調するのは「まず子どもの話をそのまま受け止めること」だ。
「先生がそんなことするわけない」という先入観は被害者を傷つける。子どもが話してくれたことは、それだけで大きな勇気が必要だったはずだ。
相談窓口として、各都道府県の教育委員会の通報窓口のほか、法務省の「子どもの人権110番」(0120-007-110)が利用できる。
この5年間で確実に言えることがある。教員による性犯罪は、一部の「モンスター」による特殊な行為ではなく、構造的・継続的な問題として日本の教育現場に深く根ざしているということだ。
2023年度の320人という数字は過去最多だが、これはあくまで「発覚して処分された数」にすぎない。専門家の言う「氷山の一角」という表現の重さを、私たちは真剣に受け止めなければならない。
2025年に発覚した教員グループ盗撮事件は、SNSによって組織化した集団犯行という新しい局面を示した。法整備やデータベースの整備は進んでいるが、それだけで問題は解決しない。
子どもたちが学校で安心して学べる環境を守ること——それは社会全体が常に意識し続けなければならない課題だ。