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学校問題

【福岡 九州国際大付属】相次ぐ暴行・性犯罪 高校野球の「闇」──2020年以降に発覚した不祥事一覧【東京 日大三】【広島 広陵】

甲子園。白球を追いかける高校球児たちの姿は、毎年夏の風物詩として多くの人の胸を打つ。しかしその裏側では、暴力、いじめ、飲酒、体罰、わいせつ行為といった不祥事が後を絶たない。

特に2020年以降は、SNSの普及によって従来なら学校内に埋もれていた問題が一気に表面化するケースが急増した。被害者の保護者がInstagramやFacebookで実名告発し、それが全国に拡散されるという新しい構図が生まれている。

本記事では、2020年から2025年までに判明した主要な不祥事を年別に整理し、その全体像を明らかにする。


目次

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2020年 ── コロナ禍でも消えなかった暴力の連鎖

横浜商業高校(神奈川)── 監督の常習的な体罰・暴言

春夏16回の甲子園出場を誇る名門・横浜商業(Y校)で、監督による体罰と暴言が発覚した。2020年10月頃から、選手がミスをした際に胸ぐらをつかむ、頭を叩くなどの暴力行為が繰り返されていた。さらに日常的な暴言も確認されている。監督には7カ月の謹慎処分が下された。

早稲田実業学校(東京)── 繰り返される性犯罪

早稲田実業では2019年、2021年、2023年と短期間のうちに複数回、硬式野球部の部員による性犯罪関連の不祥事が発覚した。同一校でこれほど繰り返される事態は異例で、組織的な再発防止体制の不備が厳しく指摘された。


2021年 ── 強豪校で相次ぐ指導者の暴走

東海大山形(山形)── 非常勤講師による体罰

夏6回・春3回の甲子園出場を誇る強豪校で、部活動指導員を務めていた20代の非常勤講師が部員の頬を平手で3回叩く体罰を加えていたことが判明。学校側は「行き過ぎた指導」として、この講師を野球部の指導から外す措置を取った。同年の地方大会では準優勝しており、結果を出している学校でさえこうした問題は起きるという現実を突きつけた。

飛龍高校(静岡)── 監督・コーチ・副部長の「三位一体」体罰

沼津市の私立飛龍高校では、60代の男性監督、40代の男性コーチ、20代の副部長の男性教員──指導陣3名が揃って体罰や暴言を行っていたことが判明した。2021年5月以降、試合や練習でミスをした部員への平手打ちなど計7件の暴行が確認された。被害を受けた部員自身が学校側に相談したことで発覚したが、逆にいえば、相談がなければ表に出なかった可能性が高い。


2022年 ── 「令和でもまだやっている」衝撃の1年

この年は特に不祥事の発覚件数が多く、高校野球界にとって「暗黒の年」とも呼べる状況だった。

聖カタリナ学園高校(愛媛)── 寮内集団暴行

2021年春のセンバツに出場した聖カタリナ学園で、2022年5月下旬に野球部寮内で1、2年生の複数部員が関わる集団暴行事件が発覚。活動は停止され、監督・部長も指導から外された。高野連からは、夏の愛媛大会と秋季四国・愛媛県大会への1・2年生部員の出場を禁止する処分が下された。結果、夏の大会には3年生部員のみで臨むことになった。

後にこの事件は、退学させられた加害者側の生徒が学校を訴えるという異例の展開にも発展している。

滝川第二高校(兵庫)── 監督の暴言・ハラスメント

甲子園7回出場の名門・滝川第二で、西詰嘉明監督が部員や顧問教員に対する暴言・ハラスメントを行っていたことが発覚。新型コロナに感染した生徒を「○○菌」と呼んだり、顧問教員に対して部員の前で「教師を辞めてしまえ」と叱責するなどの行為が確認された。監督は9月に解任された。

九州学院(熊本)── 寮内飲酒事件

プロ野球ヤクルト・村上宗隆の母校として知られる九州学院で、野球部員が校内寮で飲酒していたことが判明。2年生1人が飲酒したほか、3年生1人が剣道部や柔道部の寮生計4人とともに飲酒していた。寮職員が発見し、飲酒した2年生は転校、他の部員は1週間の謹慎処分となった。

ただし学校側がこの不祥事をすぐに公表しなかったことに対し、「甲子園に出る学校は甘やかされるのか」という批判の声が上がった。

金足農業高校(秋田)── 処分対象に

2018年夏の甲子園で「金農旋風」を巻き起こした金足農業を含む9件の不祥事について、日本学生野球協会が一括処分を決定。指導者による「教育的指導」という名の過度な指導や、部員間の暴行、喫煙・飲酒といった問題が依然として各校で続いていることが浮き彫りになった。


2023年 ── 名門校の監督辞任が相次ぐ

2023年は、名門校の指導者が体罰疑惑によって辞任に追い込まれるケースが複数報告された年だった。

また早稲田実業では再び性犯罪に関する不祥事が発覚し、短期間に同一校で繰り返し問題が起きるという深刻な構造が改めて浮き彫りになっている。

https://bunshun.jp/articles/-/81473


2024年 ── 処分基準策定へ動き出す高野連

2024年は、相次ぐ不祥事を受けて高野連と日本学生野球協会が「処分基準」の策定に動いた年でもある。スポーツ庁のガバナンスコードに対応する形で、暴力や暴言に対する処分の透明性と公平性を高める仕組みづくりが本格化した。

処分基準では、指導者の暴力や不適切な言動について類型別の標準的処分を定め、加重・軽減要因の整理が行われた。


2025年 ── 史上初「甲子園開催中の出場辞退」という衝撃

広陵高校(広島)── SNS告発が引き起こした前代未聞の事態

2025年の高校野球界最大の事件は、間違いなく広陵高校の甲子園途中辞退だ。春夏を通じて、甲子園の大会開催中に不祥事を理由に出場辞退した学校は史上初である。

事の発端は2025年1月22日。野球部の寮内で、当時2年生(現3年生)の10人以上が1年生部員に対し、カップラーメンを食べたことを理由に正座させ、100発を超える殴る蹴るの暴行を加えたとされる。被害者は一時行方不明となり、警察にも捜索届けが出された。

学校側は調査を経て、2月14日までに「加害者は4名」と認定。高野連に報告し、3月5日に厳重注意と加害部員の1カ月間の選手登録資格停止の処分が下された。被害部員は3月に転校を余儀なくされた。

しかし7月23日、元部員の保護者がInstagramで告発。学校側の調査と被害者側の主張には大きな乖離があり、特に「加害者は4名ではなく10人以上」「監督・コーチによる隠蔽工作があった」という点で決定的な認識の相違があった。

保護者によれば、コーチ3人が同席する場で被害生徒に対し「高野連に報告した方がいいんか?」「2年生の対外試合なくなってもいいんか?」と恫喝が行われたという。約束された安全対策(食事時間を分けるなど)も履行されず、報告書にも虚偽があったと指摘されている。

さらに別件として、2023年に元部員が監督とコーチ、一部部員から暴力・暴言を受けたとする告発もFacebookで実名投稿され、広陵高校は第三者委員会を設置して調査を開始。

甲子園開幕後に情報が拡散すると、チーム除名を求める声や爆破予告が相次ぎ、生徒が登下校時に追いかけられる事態にまで発展。8月10日、広陵高校は「苦渋の決断」として出場辞退を申し出、大会本部がこれを了承した。

この事件は英紙ガーディアンにも「日本を揺るがすいじめスキャンダル」として報じられ、国際的にも注目を集めた。

未来富山高校(富山)── 報告義務違反の発覚

広陵の事件と前後して、富山県の未来富山高校でも暴力・いじめ問題が発覚。こちらは高野連への報告が適切になされていなかったことが問題視された。この件をきっかけに、高野連は報告義務のさらなる厳格化方針を打ち出している。


2026年 ── 広陵の教訓は活かされなかった

2026年に入っても不祥事の勢いは止まらなかった。3月3日の日本学生野球協会審査室会議では一度に高校5件の処分が決定され、春のセンバツを目前に球界に衝撃が走った。

日大三高(東京)── 部員がわいせつ動画を拡散、春季大会辞退

春夏合わせて3度の全国制覇を誇り、2025年夏の甲子園でも準優勝を果たした超名門・日大三高で、前代未聞の性犯罪事件が発覚した。

2025年春から夏頃にかけて、17歳の男子部員が知人の女子生徒(当時15歳)にSNSを通じてわいせつな画像・動画の送信を要求。取得されたデータは部内で共有・拡散され、関与した人数は十数人規模に及んだ可能性がある。

2026年2月、警視庁が部員2名を児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で書類送検。学校は硬式野球部の活動を無期限で休止し、3月7日に春季東京都大会の出場辞退を発表した。

そして4月7日、日本学生野球協会は日大三高に対し、2025年11月3日から2026年5月9日まで(アウトオブシーズンを除く)の対外試合禁止処分を正式決定した。暴力でもいじめでもない「SNSによる性的搾取」という新しい類型の不祥事が、名門校の活動を完全に止めた。

延岡学園高校(宮崎)── 裸動画撮影・拡散で家裁送致

夏の甲子園準優勝の実績を持つ宮崎の名門・延岡学園でも、部員が女子生徒の裸を撮影し、その動画を部内で拡散させていたことが判明。関与した部員は児童買春・ポルノ禁止法違反の非行内容で家庭裁判所に送致された。

日大三高と酷似した手口であり、強豪校の閉鎖的な寮生活とSNSリテラシーの欠如が共通する構造的問題として浮かび上がった。

高知高校(高知)── コーチの暴言「殺すぞ」動画がSNS拡散

30代のコーチ(寮監)が、無断外出した部員3名に対して「殺すぞ」「なめとんのか」といった暴言を浴びせ、威圧的な指導を行っていた。指導の様子を収めた動画が1月初旬にSNSで拡散されて発覚。過去にも同様の不適切指導があったことが判明し、学校からも減給処分が下された。

日本学生野球協会は3月3日、コーチに1月6日から3カ月の謹慎処分を決定した。

その他の処分決定校(2026年3月3日)

同日の審査室会議では、計5件の高校野球不祥事に対する処分が一括決定された。

  • ある甲子園常連の強豪校で、37歳の責任教師が選手に人格を傷つける不適切発言を行い、さらに事案の報告を怠った「報告義務違反」も認定。謹慎4カ月。
  • 27歳の野球部顧問による部員への体罰が認定。謹慎2カ月。
  • 38歳の部長による不適切指導に加え、高野連への報告を怠った報告義務違反。謹慎2カ月。

特筆すべきは、指導内容そのものだけでなく「報告義務違反」が複数件で処分の加重要因とされた点だ。2025年の広陵事件で問題視された「隠蔽体質」に対し、高野連が明確にメスを入れ始めたことを示している。

九州国際大付高校(福岡) ── スパイクで顔面蹴り、被害者が提訴

2026年最大級の不祥事として注目を集めているのが、昨秋の明治神宮大会で優勝し、春夏合わせて甲子園13回出場を誇る名門・九州国際大付の事件だ。

週刊文春(2026年4月9日号・4月1日号)の報道によると、2026年2月末、プロも注目する主力部員A君が、クラスメートの部員B君をグラウンドのベンチで押し倒し、B君は頭を強打。さらにスパイクで顔面を蹴られ、病院に緊急搬送された。全治1か月の重傷だった。

センバツ開幕わずか2日前の3月17日、警察が九州国際大付のグラウンドで実況見分を実施。被害者のB君から詳細な事情聴取と供述調書の作成も行われた。しかし学校はこの事実を伏せたまま、センバツ大会に出場しベスト16に進出している。

監督が被害者の親族に対し「事故だった」と説明していた疑いも浮上しており、広陵事件と同様の「隠蔽体質」が指摘されている。さらに2025年春にもいじめの申し入れがあったにもかかわらず、学校の対応が不十分だった可能性、高野連への報告が「校則違反」として過少申告された疑いなど、組織としての問題が山積している。

4月3日、学校は公式サイトで謝罪し「事実関係について相異なる情報があり、弁護士を加えて確認・整理を進めている」と説明した。

そして4月8日、被害者の元部員が「暴行で負傷した」として九州国際大付を提訴したことが報じられた。学校側は「訴状が届いていないのでコメントはできない」としている。民事訴訟にまで発展した本件は、2025年の広陵事件をさらに上回る深刻さを帯びており、今後の司法判断が高校野球界全体に与える影響は計り知れない。


なぜ同じことが繰り返されるのか──構造的な問題

これだけの不祥事が繰り返される背景には、いくつかの構造的な問題がある。

告発しにくい仕組み。不祥事を把握して処分を下すのは高野連だが、この組織は野球部を持つ高校によって構成されている。つまり、問題を起こした高校が、自らが所属する組織に自己申告するという構造だ。実際、広島県高野連では広陵高校の校長が副会長を務めていた(事件後に辞任)。

「厳重注意」の非公表。高野連の「厳重注意」は原則として公表されない。過去15年で約70件の厳重注意が報道ベースで確認されているが、実際にはもっと多いと考えられている。公表されないからこそ、抑止力が働かない。

勝利至上主義の根深さ。甲子園出場という巨大なインセンティブが、問題の隠蔽動機を生む。「報告すれば出場できなくなる」という恐怖が、被害者の口を封じ、学校の対応を鈍らせる。

連帯責任制度の功罪。部員個人の不祥事で部全体が出場停止になる連帯責任制度は、一方では抑止力となるが、他方では「告発したら仲間の甲子園を奪う」という重圧を被害者に背負わせ、結果として不祥事を闇に葬る力学を生んでいる。


2025年の広陵事件を転機にできるか

2025年12月、高野連の審議委員会は広陵事件を受けた対応策を報告した。不祥事件報告書の様式を改め、被害者にも報告書素案の確認と異議申立の機会を保障する仕組みを導入。さらに、外部からの通報・相談窓口の設置について調査研究を進めるとしている。

2025年4月には新たな処分基準も施行され、2026年2月には早くもその一部が改定された。少しずつだが、制度面での改革は進みつつある。

しかし、制度がどれだけ整っても、現場の意識が変わらなければ同じことは繰り返される。昭和の時代から続く「しごき文化」「上下関係の絶対性」「勝てば許される空気」──これらが根本から変わらない限り、高校野球の闇は消えない。

甲子園で白球を追いかける高校球児たちの夢を、大人たちの暴力や隠蔽で壊してはならない。2026年4月現在、日大三高への対外試合禁止処分が正式決定されたばかりだ。広陵の教訓はまだ活かされていない。そのことだけは、はっきりと言い切れる。

週刊あおいみゆ

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